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「拝啓、百年先の世界のあなたへ」 [感想]

・拝啓、百年先の世界のあなたへ/中原一也 キャラ文庫


拝啓、百年先の世界のあなたへ (キャラ文庫)

拝啓、百年先の世界のあなたへ (キャラ文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/09/29
  • メディア: 文庫



100年先から送られてきたアンドロイドと恋をする話。
受の子孫が、書きかけの小説の続きを書いて欲しくて、未来からアンドロイドを送り込んだ。

受が小説家で、彼の一人称で話が進んでいくせいか、文章の形容詞が美しい。
中原さんは、こういう文章も書ける作家さんだったのねと、改めて認識。

冒頭、アンドロイドがいなくなった未来のことが書かれている。
人間とアンドロイド。
しょせん、恋をするなんて無理なことだったんだよねぇ。
突然いなくなったアンドロイドのことを想う文章が、とても暗いし重いし悲しい。
この話、やはりハッピーエンドで終わるんじゃないのね。

アンドロイドのキースはなつめとの暮らしで心が成長していく。
人間のような心を持っていく。
けっして派手ではない話。
読んでいるこっちも、心が豊かになる。
逃げた小説家という仕事だけれど、キースによってもう一度、小説を書くようになる。
対人関係が苦手ななつめも、成長していく。

キースのことを好きなままでいると、子供は生まれず、未来が変わってしまい、キースを送った子孫が存在しないことになってしまう。
そのため、なつめはキースに自分の本当の気持ちを伝えることができない。
なつめとキースと、猫2匹。
古びた一軒家で、淡々と話しが進んでいく。
が、嵐の夜、一線を超えてしまう。
二人に未来はあるのか?
それでも、淡々と話は進んでいく。
突然、キースがいなくなっても。
突然、キースがまた現れても。
淡々と進んでいく方が、リアルに感じる。

ラスト、キースを100年先からなつめのところに送り込んだ子孫がやっと登場する。
二人は生涯幸せに暮らしたんだ。
よかったよかった。
ちなみに、子孫はなつめではなく彼の姉(レズだけれど子供が欲しくて生む)の子孫。

★★★★☆

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